気候変動

ガバナンス

資産運用会社であるイオン・リートマネジメント株式会社では、サステナビリティに関する取組み推進のため、「サステナビリティ推進部会」を設置し、気候変動に関わる対応等についても重要課題の1つとして、当該部会において情報共有・審議しています。
本部会は、本資産運用会社の代表取締役社長を部会長とし、原則として四半期に1度以上開催され、サステナビリティに関する目標等について検討や審議を実施しています。本部会の活動については半年に1回以上、イオンリート投資法人役員会および本資産運用会社取締役会にて報告されています。
サステナビリティ推進体制についてはこちらをご覧ください。

戦略

本投資法人および本資産運用会社は、気候変動は事業活動に多大な影響をおよぼす重要課題であると認識し、2021年12月にTCFD提言への賛同を表明しました。賛同に関する詳細はこちらをご覧ください。
本資産運用会社は、TCFD提言に沿った情報開示を目指し、気候変動が本投資法人に与えるリスクと機会について1.5℃シナリオと4℃シナリオを用いて分析を行いました。

シナリオ分析の前提条件

分析対象

国内保有物件(底地を除く)

※海外保有物件(2物件)及び底地(5物件)については財務的影響が小さいため分析対象外としており、ポートフォリオ全体のうち87%が対象です。(46/53物件)

期間

2026年から2050年を範囲とする。「短期」、「中期」、「長期」の時間軸は以下の通り設定。
短期:~2030年
中期:~2040年
長期:~2050年

リスク分類

TCFD提言に沿い、リスクは「移行リスク」、「物理リスク」の2つに分類。さらに「物理リスク」においては「急性」、「慢性」の2種に整理。また、機会についても別途検討。

  • - 移行リスク:低炭素社会への移行に伴うリスク(政策・法規制、技術、市場、評判)
  • - 物理リスク:気候変動を起因とした災害等により生じるリスク(急性、慢性)

リスク詳細の分類に関してはUNEP FI(注1)やPRI(注2)推奨のガイダンスを参照。

以上を前提条件とし、各国際機関等が公表している将来的な気候予測を主な情報源としてシナリオ分析を行いました。

(注1)UNEP FI:国連環境計画・金融イニシアティブ(United Nations Environment Programme Finance Initiative) (注2)PRI:責任投資原則(Principles for Responsible)

参照した外部シナリオ

参照した主な情報源は、下表のとおりです。
移行リスク:1.5℃シナリオ/ IEA NZEシナリオ(注1・2) 物理リスク:1.5℃シナリオ/ IPCC SSP 1-1.9シナリオ(注3・4)
4℃シナリオ/ IPCC RCP 8.5 シナリオ(注3・5)

(注1)IEA:国際エネルギー機関(International Energy Agency) (注2)NZEシナリオ:Net Zero Emissions by 2050 Scenario (注3)IPCC:気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change) (注4)SSP:共通社会経済経路(Shared Socioeconomic Pathways) (注5)RCP:代表的濃度経路(Representative Concentration Pathways)

各シナリオにおいて想定される世界像

1.5℃シナリオ

概要

1.5℃シナリオは、2050年までの脱炭素社会実現を目指した取組みを推進し、気温上昇を1.5℃までに抑えるシナリオです。厳しい法規制や税制の導入を進める事を前提としており、相対的に物理リスクは低く抑えられますが、移行リスクは高い事が想定されます。

想定事象

・CO2排出量の大幅な減少:世界規模で、2030年までに約40%減少、2050年には正味ゼロを実現
・炭素税の導入
・再生可能エネルギーの大幅な導入等

4℃シナリオ

概要

4℃シナリオは、気候変動対策が進まず温室効果ガス(GHG)の排出が増加し続けることで2100年には地球平均気温が約4℃上昇するというシナリオです。厳しい規制及び税制等が実施されないことを想定しており、相対的に物理リスクは高く、移行リスクは低い事が想定されます。

想定事象

RCP8.5に基づく日本への気候変動影響予測(一部抜粋)

項目 21世紀末を20世紀末と比較
年平均気温 約4.5℃上昇
日降水量100mm以上の年間日数 約1.4倍に増加
日降水量の年最大値 約27%(28mm)増加
平均海面水位 約0.68m上昇
台風/台風に伴う雨風 強まる/増加
出典:文部科学省/気象庁「日本の気候変動2025」

シナリオ分析に基づくリスク・機会と財務的影響

1.5℃シナリオ

分類 発生可能性のある事象 財務的影響 発生可能性 発生時の
財務的影響
対応策
短期
(2026-30)
中期
(2031-40)
長期
(2041-50)
移行リスク 政策と法 カーボンプライシングの導入および価格の上昇 物件のGHG排出への対応コストの増加(物件設備更新、税負担、クレジット購入費用等) ①グループ各社との連携によるCO2削減の推進
②物件への環境性能の優れた設備(省エネ等)導入の推進
建築物に対する省エネ基準の強化、適用範囲の拡大 建築物省エネ法適合に向けた改修コストの増加 計画的な物件への環境性能の優れた設備(省エネ等)への分散投資
技術 省エネ性能の低い設備による退店リスク テナントの店舗運営コスト増加に伴う賃料減額 計画的な省エネ高機能設備投資の実施
市場 投資判断、融資条件への気候変動対応の考慮 気候変動対応遅れ等による資金調達コスト等の増加 ①第三者認証等の維持・向上
②情報開示の強化
③気候変動に対応した設備投資
評判 カーボンニュートラルを目指す金融機関の活動活発化 GHG排出削減対応遅れ等による融資条件等の悪化に伴う借入コスト等の増加 ①カーボンニュートラル達成に資するポリシーの策定
②物件への環境性能の優れた設備導入の推進
③グループ各社との連携強化
④情報開示による評価機関からの高レーティング取得の維持
物理リスク 急性 洪水、台風等の自然災害の大幅な増加 ハザード地域を中心に、浸水被害等による修繕費・保険料の増加 ①ハザードマップ等によるリスクの把握
②物理リスクへの対応(防水板等の設置、排水ポンプの設置、避難訓練、BCP策定等災害対策)
③保険付保によるリスク低減
④物理リスクの定量的な把握および高リスク物件の特定
⑤グループ各社とのリスク情報の共有の実施
慢性 平均気温上昇に伴う保有物件の空調利用の増加 機器の性能低下・早期故障による更新コストの増加 計画的な省エネ高機能設備投資の推進
従来の更新計画に加えて、より省エネ高機能設備への入れ替えをMLと協議
慢性 海面上昇に伴う交通網の麻痺・物流の断絶 店舗運営ができなくなることによる賃料収入の減少 BCP策定等災害対策についてMLとの継続的な協議
機会 製品、サービス 環境認証取得物件や環境性能に優れた物件への需要増加 ①環境性能の高い物件に対するテナントニーズの増加
②環境認証取得済みの保有物件のリーシング競争力上昇による賃料収入の増加
計画的な環境認証取得や定期的な設備入替えの継続推進
市場 サステナビリティファイナンスの重視 サステナビリティファイナンスを通じた資金調達先の拡大 ①第三者認証等の維持・向上
②情報開示の強化
レジリエンス 自然災害に強い物件への需要増加 継続的な安定稼働による物件の資産価値向上 ①ハザードマップ等によるリスクに基づく投資機会の把握
②グループ各社との投資機会に関する情報共有の実施
③物理リスクの定量的な把握により、投資対象の選定及び投資内容の検討
④MLとのバリューアップ協議

4℃シナリオ

分類 発生可能性のある事象 財務的影響 発生可能性 発生時の
財務的影響
対応策
短期
(2026-30)
中期
(2031-40)
長期
(2041-50)
物理リスク 急性 洪水、台風等の自然災害の大幅な増加 ハザード地域を中心に、浸水被害等による修繕費・保険料の増加 ①ハザードマップ等によるリスクの把握
②物理リスクへの対応(防水板等の設置、排水ポンプの設置、避難訓練、BCP策定等災害対策)
③保険付保によるリスク低減
④物理リスクの定量的な把握および高リスク物件の特定
⑤グループ各社とのリスク情報の共有の実施
慢性 平均気温上昇に伴う保有物件の空調利用の増加 機器の性能低下・早期故障による更新コストの増加 省エネ高機能設備投資の推進
海面上昇に伴う浸水被害の増加 店舗運営ができなくなることによる賃料収入の減少 BCP策定等災害対策についてMLとの継続的な協議
機会 製品、サービス 環境認証取得物件や環境性能に優れた物件への需要増加 ①環境性能の高い物件に対するテナントニーズの増加
②環境認証取得済みの保有物件のリーシング競争力上昇による賃料収入の増加
計画的な環境認証取得の継続推進
市場 サステナビリティファイナンスの重視 サステナビリティファイナンスを通じた資金調達先の拡大 ①第三者認証等の維持・向上
②情報開示の強化
レジリエンス 自然災害に強い物件への需要増加 継続的な安定稼働による物件の資産価値向上 ①ハザードマップ等によるリスクに基づく投資機会の把握
②グループ各社との投資機会に関する情報共有の実施
③物理リスクの定量的な把握により、投資対象の選定及び投資内容の検討
④MLとのバリューアップ協議

分析結果と今後の対応

1.5℃シナリオにおいては、脱炭素社会の実現に向けてGHG排出量の抑制を目的とした厳しい規制や税制が導入される事が想定されます。これにより、その対応に係る物件運用・物件設備改修・資金調達コスト等が増加する事が予想されます。また現時点のイオンリートのマスターリース契約の特性上、直接的な影響は少ないが、将来的に、環境性能の低い物件の価値が下落し、テナント及びエンドテナントの物件選考から剥落する事により需要が低下する恐れがあり、この影響により賃料が下落する可能性があります。

4℃シナリオにおいては、前述した規制や税制が導入されないことによりGHGの排出が増加し続け、気温上昇に起因する気象災害の激甚化が生じる事が想定されます。これにより、保有物件の修繕費や各種保険料の増加が予想されます。また、現時点のマスターリース契約の特性上、イオンリートへの直接影響は少ないが、将来的に、気象災害へさらされるリスクが高い物件においては、テナント及びエンドテナントの物件選考から剥落する事により需要が低下する恐れがあり、この影響により賃料が下落する可能性があります。

本投資法人においては、保有物件が「地域社会の生活インフラ資産」としてあり続けるため、1.5℃シナリオにて想定される移行リスクに備え、ポートフォリオ内のグリーン適格資産の割合の上昇を推進しています。また4℃シナリオにて想定されるリスクに備えハザードマップによるリスク把握や、災害対応等を推進しています。一方、気候変動によるリスクは、より多面化する事が想定されます。現時点での対応のみならず、グループ各社との更なる連携強化を実現し、適切な情報収集、リスクの対応検討・取組実施体制の整備、保有物件の設備更新等を通じてリスクの低減と機会の創出に努めてまいります。